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抵抗する女(2)
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週刊代々木忠
抵抗する女(2)
2009年12月18日(金)
僕が焦点を当てようと思ったのは、富永美沙(22歳)だった。
監督面接において、虹野加奈(30歳)はなんでも受け入れてしまうし、抵抗がないと同時に引っかかりもなかった。淡々としていて、つかみどころがないのだ。面接中、加奈はほとんど僕の目を見ない。
「ちょっと感度テストするから」と言って、加奈に呼吸法をさせてみた。トランスに誘導して、以前このブログにも書いた〈
握った手のひらが膣になる
〉をやった。すると、気持ちよがるものの、それでもこちらの目を見ようとしない。「オレの目を見て」と言うと、チラリとこちらを見るが、ものの2、3秒で自分の世界に逃げ込んでしまう。反応はものすごくいい。でも、僕とつながっていない。自分の中で妄想のセックスをしているだけなのだ。
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弓月ひかり(23歳)も、なかなか目を見るということをしない。言えば見る。加奈よりはいくらかいいという感じだ。「ふだん、どんなセックスをしてる? なんで目を見ないの?」と訊くと「私、いつも真っ暗な所でしてるから」と言う。
「じゃあ、次にプライベートで彼とセックスするとき、相手の顔がわかる明るさの中で、目を見てしてごらん」と注文をつけた。後日、撮影現場で会ったとき、ひかりは「初めて彼の目を見たとき、愛しいと思った」と話してくれた。
この子は気持ちよくなりたいというか、抵抗がないので、非常に積極的に性の悦びを知りたいと思っている。そんな彼女のワクワク感がこちらにも伝わってくる。現場では、やはりこの子がいちばんラクだろうなぁと思った。
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富永美沙も、監督面接で上の2人と同じように、呼吸法でトランスに誘導した。そこで目を見ると、美沙はしっかりこちらを見る。でも感じてくると、「おしっこ出そうだからイヤッ!」と抵抗が激しい。
しかし、この子がいちばん感情が向き合っていると僕は感じた。なぜなら、抵抗があるということは、可能性というか取っ掛かりがまだ残されていると思ったからだ。
とはいえ、その抵抗たるや半端ではなく、これまで僕が出会った女の子のなかでも珍しいくらいの度合いである。なぜ美沙はこんなにまで抵抗するのだろうか? 彼女の中のいったい何がそうさせているのだろう?
美沙と話をしながら、この子は幼児期に親から受け入れてもらってなかったのではないだろうかと僕は思った。「私、こうしたい」と親に言っても「それはダメ」というように、くり返し拒絶されてきたのではないか。僕が仕事で出会う女の子たちに、そういう子は多い。すると、その子は受け入れてもらえなかった悲しみや切なさや怒りを自分の心の深奥に溜め込んでいく。
でも、表面上の印象からは溜め込んだその感情が見えないことが多い。にもかかわらず、たとえば失恋とか、裏切りとか、あるいは自分の愛する人が亡くなるとか、そういった心に大きなダメージを与える出来事が突発すれば、それまで溜め込んでいた感情が一気に噴き出し、人格が乖離(かいり)してしまうこともあるように思える。
美沙は顔立ちからも一見ウブに見えるが、前回も書いたように元彼としていたのは、目隠し、緊縛、ムチ、ロウソク、アナルセックス......。これが5年間くり返されていた。しかもこの元彼とのセックスしか、美沙は知らない。これはセックスというより虐待みたいなものである。
もし彼女が幼児期に親から受け入れてもらえなかったとすれば、それはセックスにおいて服従を求める男とつきあってしまうことと無関係ではないように思われた。
それにしても、なぜ美沙は5年間もつきあってしまったのだろうか? そういえば、彼女が「人間嫌いだ」と言っていたことを僕は思い出していた。「感情表現が下手で、人と深くつきあいたくはない」とも。
人間はだれもが"つながり感"を求めている。だれかとつながっているという実感さえあれば、どんなにつらい出来事があったとしても、人は自殺を思いとどまれるかもしれない。
美沙は人とつながる術というかレッスンを、幼児期からしてこなかったように見える。虐待まがいのセックスを求める彼と5年間つきあったのも、虐待の痛みを快感に置き換え、たとえ服従してでもつながり感を持とうとしたのではなかったか。
「人と深くつきあいたくない!」「だれかとつながっていたい!」――そんな相矛盾する美沙の心の叫びが、僕には聴こえたような気がした。下に掲載した美沙のオクターヴ表の中の「感情オクターヴ」は「依存排他」を示している。「依存」と「排他」という、まさに真逆(まぎゃく)の感情が発露を求めて臨界点に達しているのが今の美沙なのだ。
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「ようこそ催淫(アブナイ)世界へ 11」の現場を通して、果たして美沙の「感情オクターヴ」はどのような変容を遂げるのだろうか?
【第64回】
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