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アテナ映像

週刊代々木忠

呼吸の奥義は「吐く」にあり
  もしあなたが怒りや悲しみに襲われたとき、それを引き起こした人や出来事をうらみ、いつまでもそこに留まっていると、よいことはなにもない。いずれ心や体を病むことにもなるだろう。だから「この出来事は自分が成長するために必要だったのだ」と自らに言い聞かせ、ネガティブな心をポジティブに切り換えて、明日もまた生きていこうとする。

 これは正しい。まったくそのとおりなのだが、人の感情というものが一筋縄ではいかないのもまた事実である。いくら頭ではわかっていても、理屈によって感情はなかなか抑えられない。僕なんか感情オクターヴ系なので、暴走しようものなら余計に厄介である。ポジティブ思考は大きな効果があるが、どうしても中和できない感情のシコリが残る。それを取り除くには、呼吸が最も効果的だと僕は思っている。

 これまでもこのブログで呼吸法のいくつかを紹介してきたが、今回は最も重要だと思われるポイントを記しておこう。

 今から20年ほど前、僕は毎月(多いときには月に2回も)サイパンに通っていた。当時、成田とサイパンを直行便でつなぐコンチネンタル・エアラインの機内で、こんなことがあった。

 コンチネンタルの機内には、中央よりやや前寄りにカウンターバーのあるラウンジが設けられていた。僕はそこが好きで、離陸とともにシートベルトのサインが消えると、すぐに席を立った。その日、いつものようにカウンターバーで飲んでいると、機内アナウンスが流れた。「ご搭乗のお客さまの中にドクターはいらっしゃいませんか?」と言っている。

 だれも名乗りをあげない。ふり返ると、若い女性が斜め後ろの席のフロアに横たわっていた。パニックになっているらしく、呼吸も乱れ、過換気状態なのが僕の位置からも見える。あとからわかったことだが、この女性はサイパンへの新婚旅行のため、生まれて初めて飛行機に乗ったという。気流の関係で機体が大きく揺れたから、彼女にとってはパニックを起こすほどの、それは恐怖だったに違いない。そういえば、隣でダンナさんはおろおろしていた。

 彼女の状態を見て、すぐ僕はカウンターの席を立った。女性のそばについているスチュワーデスが「ドクター?」と訊く。カウンターの中にいたスチュワーデスは僕と顔見知りだったので、ドクターなんかじゃないことはわかっていたが、なんと答えたものか、返事に詰まっている。

 かまわず僕は、横たわっている女性のもとにしゃがみ込んだ。女性の手を握り、「大丈夫、私の目を見て」。彼女が僕の目を見ると「息を吐いて。とりあえず吐き出しなさい。全部、吐いて。あわてて吸わないで。自然に入ってくるから。そう、吐き切って。そうそう、それでいい。もう大丈夫」。すると、彼女はすぐに笑顔を取り戻し、「ありがとうございます。おかげさまで、もう大丈夫です」と自分の席に座った。ここまで、ものの1分くらいだった。

 と同時に、客席からは拍手が湧き起こった。「さすが、ドクター!」みたいな感じだ。サイパンに到着し、飛行機を降りてから、一緒に行った友人からは「ドクターだって!」と腹を抱えて笑われた。つられて僕も笑ったが、でもあのときは下手なドクターよりもドクターだったかもしれないと思った。呼吸は感情をコントロールできるのだ。

 それはパニックのときだけではない。地に足をつけ生きていても、中和しきれない感情のシコリは残る。それを呼吸が溶かしてくれるのである。その際、まずあなたがすべきことは、息を「吐く」ということだ。自分のシコリを外に出すように息を吐き切ってしまう。心配しなくても吐けば、次には自然に吸い込んでいる。深く吐けば、深く吸うのである。

 ところが、深呼吸では「吸って」から「吐く」と思っている人が多い。僕はラジオ体操の影響も大きいのではないかと思っている。ラジオ体操では、第一も第二も、最後に深呼吸がある。両手を上にあげながら「深く息を吸って」、その手を横に下ろしながら「吐きま~す」と。しかもこの深呼吸は胸を使ったもので、腹式ではない。気功においては、息を吸うと「気が上がる」と言われる。「気が上がる」と緊張が解けなくなったり、恐怖感や不安感が増すと。

 ラジオ体操は80年以上前にアメリカで考案された。ラジオ体操ばかりでなく、日本は西欧からいろいろなものを取り入れ、物質文明を築いてきたが、そのぶん自然からは遠ざかってしまった。自然とともに生きていた頃には、とりわけ呼吸を意識する必要もなかっただろう。狩猟や漁労で獲物をとる際、あるいは畑を耕すにしても、かつては体を使っていたから、無意識のうちに「ハアハア」と息の荒い呼吸をしていた。「ハアハア」は、吸う音ではなく、吐く音である。

 現代のストレス社会を生きるみなさんには、呼吸の「呼」、つまり息を「吐く」ことを、ぜひとも意識していただきたい。
2011年07月01日