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アテナ映像

週刊代々木忠

年を取るということ
  日本人の平均寿命は、男が79.64歳、女が86.39歳。平均だから、それ以上生きる人もいれば、そうでない人もいる。僕は70歳を過ぎて、かつて行動をともにした人たちが何人も死んでいくのを見送ってきた。年上や同年代ばかりではない。

 なかには、確執があって恨んだり、やり合った人もいる。でも、そんな人たちももういない。だとすると、あの激しい感情の応酬はいったい何だったんだろうか……。現実が思い出に変わり、まるですべてが幻だったんじゃないかとさえ思えてくる。

 だんだん人がいなくなる寂しさの一方で、自分が幸運だと思うのは、仕事を通して新しい出会いがあることだ。そのうえ、撮影現場では欲情したり高揚しいているから、体にいいホルモンが出ているのかなぁと最近は思う。もっとも、それは今も仕事を続けているからこその話で、リタイアすれば新たな出会いもそうそうは訪れないだろう。

 これまでの人生で自分がいちばん忙しくしていたのは、いくつの頃だろう? たぶん僕は30代だ。映画の仕事をしていたが、当時はフィルムだったから、1作品を5日、長くても1週間で撮り終えないと、制作費はどんどんかさんでいく。1作品あたり400から500のカット割りを積み重ねていくので、撮影はおうおうにして深夜まで、へたをすれば徹夜のまま翌日の撮影に突入することもあった。

 撮影が終われば、仕上げがあり、アフレコがあり、ダビングがある。今と違ってプロダクション部門もやっていたから、映画制作の合間を縫ってそちらの仕事もこなした。さらに日活ロマンポルノ裁判は、僕が34歳から42歳までの足かけ9年間に及ぶ。裁判のピークには月2回のペースで公判があった。そのうえ、よせばいいのに浮気までしていた……。

 あの頃、僕は人生を楽しんでいたんだろうか? 肉体的にも精神的にも過酷だったし、無我夢中だったのは確かだ。今ふり返れば、経験がないぶん無駄もあったはずだし、空回りもしていたことだろう。

 この歳になって思うのは、多少は余裕が出てきたということである。だから若い頃のようには慌てない。こういうときにはだいたいこうなる――というのが経験として自分の中にある。死を意識する年代でもあるから、今さらそんなに急ぐ必要もない。うつ以降、無理もしなくなった。1日何時間働くと決めたら、自分で時間をコントロールしてゆく。そのほうが結果的には長持ちするのだ。

 生きている間にあと何作品撮れるのか、はっきりとはわからないが、だから1作ずつ味わいながら作ってゆく。その作品が、もしも見てくれた誰かの役に立つのなら、こんなにうれしいことはない。

 30代40代の人たちが頑張っている姿を見ると、「ああ、俺もこういうときがあったよなぁ」とか「まだ青いなぁ」とか思うことがある。だから年をとるということは、決して悪いことばかりじゃない。30代には30代の生き方が、70代には70代の生き方があるのだろう。そして人生の楽しみは、むしろ年齢とともに増えてゆくようにも思えるのだ。
2011年11月18日