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週刊代々木忠

相手の気持ちがわかる方法
  相手の気持ちを知りたいというのは、恋愛が始まる前は当然のこと、始まってからもしばしば起こる欲求である。いや、恋愛に限らず、人間関係全般において生じると言ったほうがいいかもしれない。

 たとえば仕事で、取引先から新たな提案があったとする。相手の言葉を信用してその誘いにのっかるのか、うまい話には裏があるとばかりに辞退するのかで、会社の命運が分かれることだってある。

 嘘か真かといった話だけでなく、人生においては、もしもあのとき心情を察してやれれば、もっと何かをしてあげられたのに……というケースだってあるだろう。自分がそうされたらうれしいように、相手にも言うに言えない事情があるなかで、その本音を汲み取ることはお互いの絆を強くする。

 マルコ・イアコボーニ著『ミラーニューロンの発見』(塩原通緒訳、早川書房刊)によれば、相手の顔の表情を単に模倣することで、相手の感情と同じものが自分の中にも湧き起こることが確認されている(脳内模倣)。

 ところが、被験者に「鉛筆」をくわえさせると、自分の顔を思いどおりに動かせず、表情の模倣ができない。加えて、「鉛筆」をくわえるという運動活動の信号によって、ミラーニューロンの運動活動が妨げられ、感情の知覚もうまくできなくなるのだという。

 僕は現場の何倍もの時間をかけて女の子たちと事前に話をする。それは相手の思いを感じ取り、そして感じたものを相手に伝えていくというキャッチボールである。相手とつながってわかり合えたときには、心地よさが伝わってくる。

 とはいえ、そういう人ばかりではなく、なかには僕の言うことがまったく理解できないと顔に描いてある人や「そうは言っても、こうじゃないですか」と反論ばかりが返ってくる人もいる。そんなときには、僕も伝えようとしていることが相手の中心に届いていないのを痛感する。

 なぜ届かないのか? 彼女たちに共通しているのは、性に関して偏った知識や情報のデータバンクを持っているということだ。彼女たちは僕の言ったことをひとつひとつ自分の中のデータバンクと照合している。たとえ感情や本能に属する話であっても、つねに分析する癖がついている。それはあたかも思考という名の「鉛筆」をくわえつづけているように僕には見える。

 僕たちは、相手が泣いていれば「何が悲しいの?」、笑っていれば「何がおかしいの?」とついつい訊いてしまいがちである。でも、思考でそれを理解しようとするのではなく、相手が泣いていたら自分も泣き顔を、笑っていたら自分も笑顔をつくることによって、その心情までが理解できるのだ。

 これはセックスのときにも有効である。たとえば指で彼女の局部を愛撫していたとする。彼女が感じてきて、息が荒くなり、あえぎ声が漏れる。男にしてみれば内心「やった!」である。ついつい愛撫する指にも力が入る。女の子たちがよく言う。「最初は気持ちよかったんだけど、途中から痛くなった」と。

 彼女が感じてきたら「もっと感じさせてやろう」ではなく、男もそれを模倣すればいいのだ。彼女の表情をまね、息づかいをまね、発する言葉をオウム返しで言ってみる。彼女が「気持ちいい~」と言ったら、「オレも気持ちいいよー」と言えばいい。すると快感のミラーリング(脳内模倣)が起きる。

 長年連れ添った夫婦は顔が似てくると言われる。お互い同じ表情をしている時間が長く、同じ感情を分かち合っていると、きっとそうなれるのだろう。
2012年05月25日