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アテナ映像

週刊代々木忠

代々木流ビデオ編集講座
  自宅でリビングから自分の部屋に何かを取りに行く。でも、部屋のドアをあけた途端、「オレ、何しに戻ってきたんだっけ?」。ネットでちょっと調べたいことがあって、パソコンを起ち上げる。起動までの間、雑誌をパラパラめくり、起ち上がったら「あれ? 何を検索するんだっけ?」。そんなことがしょっちゅう起こる。

 もう74歳だから……という思いもあるが、先月、ちょっと気になることが起きた。以前、僕の作品に出た女の子から電話がかかってきた。彼女は俗にいう霊媒体質。いろいろ悩みを抱えているようなので、「愛と性の相談室」でお世話になっているスピリチュアル・カウンセラーの早坂ありえさんに一度見てもらったらどうかとすすめた。

 それから何日か経ったある日、翌日が「ザ・面接」の撮影日なので、僕は事務所に1人で泊まることにした。その夜、僕は彼女に電話し、「早坂さんのところにオレは○日に行くことになってるから一緒に行こう」と言ったらしい。「らしい」というのは、のちに彼女がそう言っているものの、僕にはまったく覚えがないからだ。

 リビングから移動したり、パソコンを起ち上げたときの物忘れとは、ちょっと種類が違うんじゃないか。その部分の記憶がまるごと抜け落ちているのだから。ホントにオレは電話したのか? なんで覚えてないんだろう? その女の子が嘘をついているとは微塵も思っていないけれど、白黒ははっきりさせたい思いがある。

 結局、早坂さんのところに一緒に行くことになり、当日その子と待ち合わせをしていた。そのとき僕はふと思い至った。あの夜、彼女に電話したのなら、携帯の電話帳を見ながら、わざわざ会社の電話のボタンを押すとは考えられない。かけるのなら携帯からだ。だったら発信履歴が残っているじゃないか。根本的な解決にはならないとしても、とりあえずひとつのモヤモヤは消える。

 確認するために携帯を開くと、彼女から着信履歴があった。待ち合わせの場所にもう着いているのだろうか。折り返し電話する。さて、問題の発信履歴だが、撮影前夜のものはなかった。彼女のほうが勘違いしているのか……。

 ちょうど現われた彼女にそれを問うたところ、「同じところに電話したら、前のは消えちゃうのよ。さっき電話くれたでしょ?」「え? そうなの」「じゃあ、いまワンコールしてみて」。すると、確かにいちばん新しい履歴しか出てこない。

 まぁ、発信履歴については電話会社に本人が依頼すればその明細をもらえるので、調べようとすればわかるのだけれど、もうひとつ思い出したことがある。あの晩、僕はワインを飲んでいた。翌日は撮影だし、酩酊(めいてい)するほど飲んではいない。

 ただ、寝ようとしたのがすでに午前2時だったので、早く寝つかなければと導眠剤もそのとき飲んだのを思い出したのだ。そういえば、アルコールと導眠剤は一緒に飲んではいけないと医者から注意されたことがあった。まれに記憶が飛ぶこともあると。きっとそのせいだと僕は思うことにした。

 定期的に同世代の仲間たちと、勝浦にあるスタジオ兼別荘に僕は遊びに行く。このところ物忘れの話題になると、みんな他人事ではないだけに「そうそう!」と盛り上がる。そればかりか、最近では話を始める際に「この話、前にしたっけ?」という前置きが入ったりする。それが始まると、聞いている者たちはクスクス笑い合う。

 「物忘れがひどいと言っているうちは大丈夫みたいだよ。認知症になると、物忘れしてることすら覚えてないらしいから」とだれかが言う。みんな、じゃあ、まだ大丈夫だと安心する。また、別のだれかが「自分の女房の名前が出てこなくなったら、ヤバイみたいだね」。みんな、女房の名前を心の中で思い浮かべ、ホッとする。

 お互いキズを舐め合っているようでもあるけれど、僕は1人じゃなくて本当によかったとあらためて思うのだ。「オレだけじゃないんだ」という思いが、心を軽くしてくれる。ストレスはコルチゾールという物質を分泌させ、これが短期記憶をつかさどる海馬(かいば)を攻撃するという。ならば、物忘れで落ち込んだり悩んだりするのは、いっそう物忘れを助長させることになるのではないだろうか。くよくよしても仕方ない。

 勝浦で僕たちは「物忘れも必要なんだよ!」という結論に達した。「長いこと生きていれば、どんどん記憶が溜まってくるから、命に関わるような重要な記憶は別にして、そうじゃないものを捨てていく必要があるんだ!」と。

 その後、ネットで偶然こんな記事を見つけた。〈人間の脳は大事な記憶をすぐ思い出せるようにするため、関連する相対的に不必要な記憶を忘れ、脳の活動を効率化している可能性があると、米スタンフォード大学の研究チームが科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」の電子版に発表した〉。僕は「やっぱそうだよ!」と思いつつ、今後、酒と導眠剤の同時服用には気をつけようと肝に銘じた。
2012年07月20日