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アテナ映像

週刊代々木忠

74でも朝勃ちします!
  「74歳で朝勃ちする」と言うと「スゴイですね!」とか「羨ましいですね!」と驚かれる。続けて「健康の秘訣は?」と訊かれたりもする。たぶんいちばん大きいのは呼吸法だと思う。

 なんだ、また呼吸の話か……と思われる人もいるかもしれない。でも、今アマゾンで「呼吸」に関する本を検索すると1000冊くらいがヒットする。なかにはタイトルに「呼吸」が入っているだけで呼吸とは無関係なものも含まれるが、なんらかの「呼吸法」について書かれたものだけでも数百冊に及ぶはずである。それほど「呼吸」への関心は高まっているということだろう。

 僕も「呼吸」の本はそれなりに読んできた。今回紹介するのは、28年前に出版され、その17年後に新版としてあらためて刊行された、村木弘昌著『万病を癒す丹田呼吸法』(春秋社刊)という本である。僕は新版のほうを10年ほど前に読んだ。医学博士の書いたこの本が、当時、他の呼吸本と決定的に違っていたのは、呼吸の効用がとても科学的に(医学的に)、しかも素人にもわかりやすく説かれていたことだ。その一部を引用してみる。

 〈生体が生き続けてゆくためには、体細胞はエネルギーを必要とする。そのエネルギー源の主なるものは血液内のブドウ糖(血糖)であることは周知の通り。60兆といわれる体細胞はエネルギーを得るために糖を必要とする。つまり血糖を細胞内にとり入れ、それを分解する。その分解産物は最終的に水(H2O)と二酸化炭素になる。

 このうち水は体内で利用価値があり、多くなれば尿あるいは汗となって体外へ排除される。血中二酸化炭素は肺というガス交換装置を用いて体外へ排除されるべきものである。

 ところが当然出るべき二酸化炭素が浅い呼吸のため血液内に停滞すると、事は面倒になる。血中の二酸化炭素は水と結合して炭酸となる。

 CO2H2O H2CO3 H+HCO3-

 この炭酸(H2CO3)は紛れもない酸であるから血液を酸性化する。健康では血液は弱アルカリ性である。これが酸性化することによって体は不健全な方へ傾いて行く。それは病気の受け皿を準備するようなものである〉

 つまり、僕たちは大気中の酸素を呼吸によって体内に取り込み、ブドウ糖を燃やして、そのエネルギーを60兆もの細胞に行き渡らせようとする。だが、この取り込むべき酸素が不足したら、いったいどうなるのか? ブドウ糖はうまく燃えない。ならば全細胞に行き渡るだけのエネルギーは生まれないということになる。

 本書では、普通の呼気量(吐き出す空気の量)と、不安・心配・憂うつ時など極度に浅い呼吸時の量とでは、約40倍の開きがあると書かれている。つまり、呼吸が極度に浅い場合は、通常の40分の1しか二酸化炭素が吐き出されず、であれば酸素も40分の1しか取り入れられないということである。

 この本は28年前にその警鐘を鳴らしているわけだが、その後、僕たちの呼吸はよくなったのか。たくさんの酸素を取り込み、たくさんの二酸化炭素を排出できているのだろうか。

 28年の間にわが国はバブルを迎え、そして崩壊した。企業は活路を見いだそうと消費者のニーズを追いかけた。パソコンが家電のごとく各家庭に浸透し、テレビは大画面化し、ゲーム機やゲームソフトが空前の売上を築いた。ケータイはスマホの登場で今も元気がいい。僕たちの生活はどんどん便利になったけれど、そのぶん体を動かすことは減った。

 仕事でも、かつては行動をともなったものが、今はメールやネットで済んでしまうことが多い。そのかわりパソコンに向かっている時間は増えた。今や大企業といえどもリストラは珍しくない。働く側のストレスや不安は以前の比ではないだろう。

 体を動かさず、ストレスが増せば、無意識の呼吸はおのずと浅くなる。ちなみに全国の医療機関に支払われた医療費は、9年連続で増えつづけ、昨年度は37兆円を超えているという。

 無意識の呼吸が浅いのならば、意識的に深い呼吸をする必要がある。僕も意識的な呼吸のおかげで、今も元気に仕事ができている。これまでもブログや本で書いてきたけれど、あらためて「長息」と「短息」を実践するうえでのポイントを紹介しよう。

 長息も短息も、腹式呼吸である。腹式呼吸は「横隔膜呼吸」とも呼ばれる。肺には肺自体を動かす骨格筋がないので、呼吸は横隔膜をはじめとする各種の筋肉によって行われている。横隔膜は、心臓や肺を含む胸腔と、胃や腸を含む腹腔の、ちょうど境に位置している。

 息を深く吸おうと思えば、横隔膜を押し下げ、そのぶん胸(肺)をふくらませる。逆に吐こうとすれば、押し下げた横隔膜をゆるめて元に戻し、胸(肺)を縮ませる。腹式呼吸はお腹に空気が入るわけではなく、横隔膜を押し上げたり元に戻したりする動きに反映して、お腹がふくらんだりへっこんだりするから腹式呼吸なのである。

 まずは「長息」から。長息は、最初に4秒鼻から吸って6秒口で吐く。吸う時間はそのままに、吐く時間を6秒、8秒、10秒、20秒……とだんだん長くしていく。だが、実際にやってみるとわかるけれど、たとえば20秒吐くというのはけっこう大変である。最初はそこまで息が持たない。息を持たせるためには、横隔膜を少しずつ動かしたり止めたりと自分でコントロールしないといけない。

 長息のポイントは、吐き切ったら、すぐには吸わないということ。すぐに吸うと喉にくるので、吐いたらまず全身の力を抜く。すると次には自然に入ってきている。そこをちょっとサポートするような気持ちでお腹をふくらませるというか、気を下に落とす気持ちでやるとうまくいく。長息が身につけば、不動心が育つというおまけもついてくる。

 次に「短息」。1秒間に吐いて吸っての1往復。ただ、吸うほうは勝手に入ってくるので、実際には吐くことだけを意識する。要するに1秒に1回、鼻から強く吐き続けるのである(口から吐くと、トラウマのある人はパニックになる場合がある)。ものの5分も続ければ、血流もよくなり体がポカポカしてくる。

 短息でも喉を絞ってはいけない。喉を絞ったり、横隔膜より上に力が入ると脳圧が上がる。特に年配の人は気をつけてほしい。とはいえ、慣れないうちは下腹だけに力を入れるというのがなかなか難しい。コツとしては、腹筋を絞り、それに加えて股間に力を入れる。肛門をしめたり、女性ならば膣をしめるということである。この呼吸には、勃起力の増強と感度アップという副産物がついてくる。

 朝、僕はベッドから出る前、布団の中で短息をしている。短息を始める前は、起きてから頭がスッキリするまで顔を洗ったり歯を磨いたり、時間がかかったが、短息を始めてからはその感覚がまったくない。一気に動ける。全細胞に行くべきものが行き渡るからだろう。夜はテレビを見ながら、あるいはストレッチをやりながら長息をしている。

 長息は場所を選ばず、電車の中でも仕事中でもできる。とりわけ職場でパソコンに向かっているときは無意識の浅い呼吸に陥りがちだから、そんなときこそ長息を、たとえ数分間でも取り入れてみてほしい。特に冷え症の人には絶対オススメである。

 ついつい忘れてしまわないように、パソコンモニターの横にでも「長息」と書いたフセンを貼っておいていただきたい。自宅の寝室には「長息・短息」の文字を額に入れて掛けておいていただきたいくらいだ。それくらい価値がある。

 生涯それをやれれば、医療費が抑えられ、家計の足しにもなろうというものだ。男は朝勃ちし、女は感度がよくなる。長息も短息も、呼吸にお金はかからない。用意するものは、あなたの体ひとつである。
2012年11月16日