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アテナ映像

週刊代々木忠

オープンカレッジ in 浜松
  浜松駅のホームに降り立ったのは、新幹線が東京駅を出てから1時間半後のことだった。浜松は思い出のある土地だ。

 興行を生業(なりわい)としていた20代の頃、「金馬車ミュージック」という浜松のストリップ劇場に3カ月間、寝泊まりさせてもらった。僕はある人物との抗争の渦中で、「金馬車」にはいくつかの名だたる組から相当数の不良たちが加勢に集まってきていた。取らなければこっちが取られる。当然ながら僕は彼を取るつもりでいた。そんなある日、不良仲間が乗り合わせた劇場の宣伝カーが交通事故を起こし、荷台に寝っ転がっていた僕も頸椎の7番目を損傷した。それは夜襲をかける前日のこと。半年間、石膏で固められる身となって、夜襲は頓挫する。もしも事故が起きなければ、監獄に入れられたか、死んでいただろう。そして、8年前から始めた骨格矯正で、その古傷が今も足を引っ張る。

 新幹線ホームを歩き、改札を出ると、蛍光グリーンのジャンパーを着たスタッフの人たちが立っている。案内デスクで名前を言い、講師用パスを受け取る。案内されるままにタクシー乗り場に向かっていると、「ご一緒させていただいてもいいですか? ナツノと申します」と笑顔で声をかけられた。車中、慶應大学で教えていらっしゃると聞き、こんなに気さくな教授がいるんだとちょっと驚く。あとからわかったのだが、フジテレビ「とくダネ!」のコメンテーターもされている夏野剛さんだった。夏野さんのおかげで気持ちよく会場に入る。

 講師控室がズラリと並ぶ廊下には、テレビや雑誌でよく見る顔ぶれが溢れていた。彼らのほとんどは「エンジン01(ゼロワン)文化戦略会議」の会員で、僕は今回だけのゲストだが、それにしても場違いな所に迷い込んだような……。そんな気分でいると、田原総一朗さんがニコニコしながらやってきて、向こうから挨拶してくれた。舌鋒鋭い討論番組の印象とは打って変わって柔和な笑顔。それが僕を和ませ、落ち着かせてくれる。

 懐かしい人にも会えた。秋尾沙戸子さんである。僕は十数年前、関西テレビの「ワンダラーズ」という深夜番組に月1回出演していたことがあったが、その番組の司会をされていたのが秋尾さんだった。彼女は番組で取り上げた呼吸法に興味を持って、自ら体験されたこともある行動派のジャーナリストだ。その後、海外での活動も多くなったようで、滞在先の国々から何通かハガキをもらった。

 僕が呼ばれたのは「アダルトビデオ産業は必要か?」がテーマの講座で、進行役は和田秀樹さん。他には、会場となった静岡文化芸術大学で准教授をされている木下千花さん、そして花房観音。和田さんとは3年ほど前、三枝成彰さんを介して一緒に飲んだことがあったので気心が知れている。そのときから彼の頭の回転の速さとズバ抜けた記憶力のよさはよく知っている。しゃべることが好きな人なのに、講座では一歩引いてこちらを立て、うまく引っ張っていってくれた。

 和田さんから、前回飲んだときに『受験のシンデレラ』、今回は『「わたし」の人生(みち)』という彼自身が監督した映画のDVDをもらった。ご覧になった方もいるだろうが、『受験のシンデレラ』では「受験」を、『「わたし」の人生(みち)』では「介護」をモチーフとしている。どちらも彼の専門分野であり、自分の向かうべき道を外していない、一本筋の通った作品である。

 僕の出る講座は終わったが、夜に来場者と酒食をともにしながら語り合う「夜楽(やがく)」が待っている。まだ3時間以上あるので、誰かの講座を聴講させてもらうことにした。時間割を眺めていると、秋尾さんが「メディアはどこへ?」という講座に出るようだ。タクシーでご一緒した夏野さんもいるではないか。この講座にしよう。他には黒岩祐治さん。進行は茂木健一郎さん。茂木さんは3年前に三枝さんたちと飲んだときメンバーに入っていたのだが、当日急に来られなくなった。以来、茂木さんの話を一度聴いてみたいと思っていたのだ。そのうえ、ずっと注目していた上杉隆さんの飛び入り参加というオマケまでついた楽しい講座だった。

 「夜楽」はいったんホテルに講師たちが集合し、そこからグループごとに決められたレストランや料理屋に向かう。そのホテルにて、僕はある人から声をかけられた。迷惑がかかるといけないので名前は伏せるが、アカデミズムの重鎮である。当然、面識はない。その人は「代々木さんのチャネリングは面白いですね」と言う。意外だった。「チャネリングFUCK」は賛否両論あったとはいえ、「ヤラセだ」「宗教を興す気だ」とさんざん顰蹙(ひんしゅく)も買った。キワモノとして見られたのだ。にもかかわらず、その人はご夫婦で「チャネリングFUCK」を見ながら、「なぜこういう現象が起きるんだろう?」と関心を持っていらっしゃる。僕は「じつは○○大学にそのメカニズムが解明できそうなMRIがあると聞いて、去年、そこの教授に手紙を送ったんですが」と言ったら、「ああ、○○君かい?」と即座に名を言い当てた。僕がうなずくのを見て、「で、どうなったの?」と訊く。「門前払いでしたよ」と答えたら、彼はおかしそうに笑った。その機械が1台何億するのか知らないが、脳の解明にやっきになっている学者にAV監督の僕が「チャネリングFUCKについて調べたいんだけど」と打診したことがハチャメチャすぎておかしかったのだろう。

 「夜楽」は2時間という限られたなかで、講師たちがお客さんの中に散らばる。僕のグループは講師が6人だったので、15分ごとに講師が席を移動し、60人のお客さん全員と話をするというシステムだ。15分というと、やっと打ち解けてきたところで次に移らねばならない。僕の前が別所哲也さんだった。タッパもあってカッコいい彼に会いたくて来たファンは多かったはずである。ところが、あっという間に時は過ぎ、彼は次の席へ……。そして彼がいた席に僕がやってくるという流れは、終わりまでずっと変わらない。「この変なオジサン、誰?」って感じの席もあった。もちろん、それはそれで面白かったし、なかには「ずっと会いたくて」と言ってくれる20代の男の子がいて、内心ホッとしたりした。たくさんの人と話をした印象は、総じて女性のほうが性についても具体的で突っ込んだ質問をしてくるということだ。

 このオープンカレッジを主催している「エンジン01(ゼロワン)文化戦略会議」という組織は、三枝成彰さんが中心になってここまで大きくしてこられた。最初は会員である人たちがお金を出し合って始めたと聞くし、今回も会員はノーギャラだ。それでも各界の第一線で活躍する多忙な人たちが協力を惜しまなかったわけである。今回、三枝さんに驚かされたことがある。「夜楽」で彼は僕のグループのリーダーだった。会が始まるとき、集まった60人のお客さんを前に「僕が尊敬する代々木忠さんです」と紹介された。彼一流の気づかいなのは言うまでもないが、著名な人間がなかなか言えることではない。三枝さんは日本を代表する偉大な作曲家だが、彼のこうした人間性が多くの人たちの心を動かし、ここまで会を育ててきたのではないかと僕は思った。浜松に着いてから、僕はいろいろな縁を感じていた。人と人は見えないところでつながっている。そのつながりを、三枝さんはきっといちばん大切にしてきたのだろうと。



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2013年02月22日