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アテナ映像

週刊代々木忠

老いない魔法
  夏には気の合う友人たちと千葉の別荘に出かけるのだが、今年は女房の具合が悪かったり、看病疲れから僕が風邪を引いたりで、行けないままになっていた。朝夕秋めいてきて、友人からは「そろそろどうですか?」の声もかかり、女房の具合も落ち着いていることから、先日、男5人、3泊4日で行ってきた。

 メンバーはいつもの顔ぶれで、下が50代後半、上が77歳のジャイアント吉田さんだ。若者はいない。さすがにみんなこの歳なので、老眼鏡や遠近両用の世話になっていると思いきや、最年長の吉田さんは新聞や雑誌を読むのにも眼鏡を使わない。老眼鏡がなくても、あの小さな文字が見えるのだ。

 目だけではない。これまで虫歯で歯医者に行ったことはあると言うが、77の今なお、全部自分の歯である。これって、凄くないだろうか? 残りの4人は、アンチエージングの秘訣を吉田さんから聞き出すことにした。

 彼は若い頃から「体が資本だ」と考えており、武道をたしなみ、ずっと体を鍛えている。今も週に2日はスポーツジムに行く。たしかに長年の弛(たゆ)まぬ稽古やトレーニングは大きな効果をもたらしているはずである。

 けれども吉田さんいわく、目や歯が現役なのは、それ以外にも理由があるという。彼は日本催眠術協会の理事長であり、催眠術をたくさんの人たちに教えている。彼は率先して自分にもアンチエージングの自己催眠をかけつづけているというのである。たとえば「歯はもう全部、死ぬまで自分の歯でいる」と。

 人に教える手前、身をもって実証しないと自信をもって言えないというのもあるはずだが、もともと好奇心が人一倍旺盛な人である。いったい自己催眠でどこまでできるのか、本当は自分がいちばん知りたいに違いない。

 10年ほど前、吉田さんは友達と立ち話をしていて、バックしてきたフォークリフトに足を轢(ひ)かれた。運転していたのは、地元のバイトのおじいちゃん。吉田さんも、まさかおじいちゃんがこっちをぜんぜん見てないとは思わなかったらしい。

 結果、足首を複雑骨折。歳は当時もう60代の後半だし、ケガの場所が場所だし、複雑骨折だしで、もとどおりになるのは難しいだろうと思われた。なかには、寝たきりになってしまう人だっているくらいだから。

 ところが、吉田さんは「絶対もとどおりになる」と自己催眠を入れつづけたそうである。そして今はまったくふつうに歩けるばかりか、走れるし、涼しい顔で正座までしてみせる。

 「だけど苦労もあるんだよ」と吉田さんが言う。要は自己催眠が上手くなると、自分の思いが肉体に与える影響が顕著になる。日常生活の中ではいろいろな人と接するし、体調がいいときばかりではない。そんなときに、ちょっとでもネガティブなことを思うと、思っただけでそれが体に来てしまうようなのだ。

 さて、吉田さんのアンチエージングの秘訣は自己催眠にあったわけだが、今回、千葉で友人たちと過ごしていて、自己催眠に加えてもうひとつあるんじゃないかと僕は思った

 それは吉田さんが“自分の体の声”に忠実であるという点だ。たとえば、前回ゴールデンウィークに集まったとき、彼は酒を一滴も飲まなかった。もちろん飲めないわけではない。飲んでも美味しくないと感じたときには、僕らがいくら勧めても飲まない。ついつい、つきあいで……とはならないのである。それが今回は2日目、朝風呂から上がったときに「ビールでも飲もうかな」と言い出した。きっと体がビールを求めていたのだろう。

 こうした「オレはオレ」という生き方は、社会から見たら「わがまま」とも取られがちだが、それを貫けば老いてヨレることもないように思える。僕ら5人はだれもサラリーマンの経験がなく、それぞれの道で自由に生きてきた。吉田さんの「体が資本」じゃないが、だれかが守ってくれることはないから、その都度自分でなんとかしなきゃならなかった。

 それでも、この歳まで楽しい人生を送ってこられた。今の人たちはとかくリスクを計算し、回避しようとしがちだけれど、思いどおりに行かない可能性や失敗するかもしれない危険性は、なにも悪いことばかりとは限らない。それらは、生かされているのではなく、自分で生きているという証(あかし)でもあるのだから。




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2013年10月04日