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アテナ映像

週刊代々木忠

テゲテゲ
  友人のひとりに働き者の元ヤクザがいる。アスベストを落としに行ったり、福島第一の仕事に出かけたりしている。彼いわく「今ベテランはほとんどいないのよ。だいたい3カ月くらいで(放射線の)許容量を超えてしまうから、そうなると仕事を1年あけなくちゃいけない。それに(別の原発の)再稼働がらみの仕事のほうが、いろんな意味でオイシイらしい。最近の福島は素人ばっかでヤバいよ」。

 50代だが、根がまじめで義理人情に厚い、昔のヤクザの匂いがする男だ。そんな彼が飲み屋を開業した。そろそろ老後のことを考えたのかもしれない。最初に聞いたときは半分冗談かと思ったけれど、もともとラーメン屋だったところを居抜きで借りて、自分で改装したという。

 店の名は「テゲテゲ」。彼は沖縄離島の出身だが、九州の方言で「いい加減な」という意味らしい。「もともとオレはいい加減だから」と言う。「気が向いたときしか(店を)やらんから」と。そんなんで潰れないのかと、ちょっと心配になる。せっかくお客さんが来てくれても閉まってたり、いつ開いてるかわかんないんじゃ、それこそ二度と来てくれないというのが世の常じゃないのか……。

 共通の友人3人と顔を出してみた。カウンター中心の店だが、そのカウンターや壁は、板を自分で焼いてこすって木目を出している。こだわりは内装にとどまらず、調理はガスでなく炭を使っている。料理は薩摩地鶏の網焼きやたたき、故郷沖縄の豆腐ようやポーク玉子、馬刺しや牛スジ豆腐などなど。素材にこだわり、なおかつ何でも自分でやってきた男の料理はなるほど旨い。

 とはいえ、お客さんのほとんどは地元の人、それも年配の人たちだろうと思いきや、意外にも若者たちが多いのだという。音大に通う女の子やレーシングチームのメカニック、映画の脚本家たちが彼と話しにやってくる。いろいろ苦労をしているだけに、今の若い人たちが聞くと、いい話なのかもしれない。しかも、乱暴な話をするかと思えば、しんみりした話も受け止めてくれる。きっと若者たちがこれまで出会ったことがないタイプの大人なのだ。

 しかも、シンプルな性格の彼には裏表がなく、そのうえいい加減でわがままときているから、お客さんも地が出せて、くつろげるのだろう。「この前、計算もしてなかったんで『もう1000円ずつでいいよ』って言ったら、『それじゃあ悪いから』と3000円ずつ置いてったんだよね」とか、「こっちも飲んでたら眠くなっちゃって、お客さんほったらかして奥で寝ちゃったのよ。起きたら、もう誰もいないんだけど、ちゃんと片づけてお代も置いて帰ってくれて……」とか、テゲテゲぶりは枚挙にいとまがない。

 店に来る若い女の子からは「孫がいるんでしょ?」と言われているようだ。確かにいてもおかしくない雰囲気を漂わせている。「オレは結婚したことは一度もねえ」って言うと「えー!?」って驚かれるのだと。彼には男の色気がある。言い換えれば、オスの匂いがするのだ。きっとそれは沖縄の離島という自然や習俗の中で育まれたものだろう。

 むろん女が嫌いなわけではない。これまで惚れた女もいたはずだ。では、なぜこの歳まで独身を通したのか? 直接訊いたことはないけれど、ヤクザもんというだけで結婚はなかなか難しい面もある。それに彼の中にも「いつ死ぬかわかんねえし……」という思いがあったのかもしれない。

 自分の好きなように生きてきた彼の人生は充実しているように見える。彼自身おそらく後悔はあるまい。自分の本当にやりたいことよりも将来のリスクを気にし、世間に合わせて、そこから現在を選択するような生き方をしている若者を見ると「もっとテゲテゲでもいいじゃないの」とつい僕は思ってしまう。
2014年05月23日