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アテナ映像

週刊代々木忠

裏切りへのケジメ
  新しいことを始めるときには出会いがあった。一緒に何かをしようと思えば、その人を信用して物事は進んでいく。いや、正確にいえば、信用してるっていう意識もない。始める前から疑ってかかったり、裏を読んだりはしないということである。

 それでうまくいったこともあれば、手痛い裏切りに遭ったこともある。とりわけ日活の下請けをしていた頃には、口約束がことごとく覆されたりもした。それ以前に身を置いた不良の世界では、自分も相手も己の吐いた言葉に縛られていた。それがこちら側では、信じた言葉が相手の都合でいともたやすく嘘と化す。「カタギは汚ねえ」と何度心の中で毒づいたか知れない。

 しかし、裏切った連中に対してケジメを取ろうとはしなかった。不良時代、僕は周囲から「引くことを知らない男」と言われていた。にもかかわらず、なぜ「よしヤッたろか!」とならなかったのか。いったん行動を起こせば、もう後には引けず、行き着くところまで行ってしまう。それがわかっていた、というのもある。

 いや、当時、渦中ではそれだけが抑止力だったかもしれない。でも、しばらく時間を置き、ある程度の冷静さを取り戻したとき、全体を俯瞰することで見えてくるものがあった。確かにそのとき裏切ったのは相手のほうだが、僕も自分の本心をどこかで偽(いつわ)っていた――。

 どういうことかわかりにくいと思うので、実例をひとつ紹介しよう。

 その頃、僕は日活から年間何本(1本あたりいくら)という形で映画制作を請け負っていた。社外プロデューサーとして誰に何を撮らせるのか決める立場にあったのだ。そこへ知り合いの一人が、監督のAにぜひ撮らせてやってくれないかと言ってきた。聞けば、Aは経済的にかなり困っているらしい。話を持ってきた男とは旧知の仲でもあるし、彼との義理からAにある作品の監督を依頼した。それがたまたまヒットする。すると、Aは日活に「自分と直接契約してくれればもっと安い制作費でできる」と話をまとめてしまった。もちろん僕には内緒で。

 さて、この話の中で、僕が自分の本心を偽ったところはどこだろう?

 もともと撮らせたい監督は他にたくさんいたのだ。みんな仕事が欲しいのである。Aに依頼するくらいなら、それまでつきあいのある監督たちに頼むほうがよほど自分の意に副(そ)っている。にもかかわらず、僕は旧知の男との義理を優先させた。そのひずみというか、ねじれみたいなものが、Aの裏切りという形をとって現われたんじゃないだろうかと僕は思った。

 この話に限らず、裏切られた出来事では、自分が本当はしたくないことをしていたり、したいことを曲げてたり、本心と向き合わないまま流れに任せていたり……というのが見えてきた。それは裏切った相手よりも先に、じつは自分が自分の心を裏切っていたということだ。

 だから、相手をとことん追い詰めたところで、その瞬間はいくぶん溜飲が下がったように思えるけれど、失ったものが元どおりの形でよみがえることはなく、残るのは空しさである。

 であるなら、報復に費やすエネルギーと時間を、もっと別の、できれば創造的なことに注(つ)ぎ込んだほうがよほどいい。懲りずにまた裏切られることもあるけれど、自分一人でできることなどたかが知れているし、初めから相手を疑ってかかれば何事も成就しないのだから……。





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2014年07月18日