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アテナ映像

週刊代々木忠

キレる老人、事故る老人
  少し前までは「若者たちが突然キレる」というニュースをよく耳にした気がするけれど、今は年寄りのほうがヤバいらしい。

 2016年版の『犯罪白書』(法務省)によれば、65歳以上の高齢者の犯罪が目に見えて増えている。20年前と比べて、殺人が2.5倍、強盗が8倍、傷害が9倍、傷害まで至らない(つまり相手にケガを負わせるに至っていない)暴行はなんと49倍だというから驚く。

 年寄りが世の中を騒がせてるという点では、交通事故のニュースも相変わらず多い。進路を間違えて高速道路を逆走した、ブレーキとアクセルを踏み間違えて歩行者の列やスーパー・コンビニなどの店舗に突っ込んだ……そんな事故が後を絶たない。

 もう3年前になるが、「トマトは野菜ですね」というタイトルで、このブログに運転免許の高齢者講習について書いた。あれから3年が経過し、先日また受けてきたので、その実態と問題点について今回はお話ししたい。

 70歳から始まる高齢者講習は、自動車教習所にて行なわれる。届いた案内ハガキには都内47カ所の教習所が載っていて、その中から好きなところを選ぶ。僕はクルマで行きたいので、駐車場のある所がいい。というのも、前回行った教習所はかつて駐車場があったものの、3年前の時点ではその土地は売却され、すでになくなっていた。

 今回行こうとしている教習所へ事前に電話し、現在の駐車場の有無を確認すると、「はい、あります」という返事。当日行ってみると、あるにはあるが、コインパーキングとの提携に変わり(受講者は無料)、以前と比べて教習所の敷地は半分くらいに縮小され、コースも小さくなっていた。

 高齢者講習のメニューは、記憶力や判断力を調べる認知機能検査(これのみ75歳以上)、動体視力や視野などを測定する目の検査、モニターの中の直線やカーブを走っていると歩行者が飛び出してきたり赤・青・黄の信号がアトランダムに出てくる運転シミュレーター、そして最後にコースを走る。

 その日の受講者は僕を含めて11人だったのだが、運転シミュレーターをやっているとき、教官がこんなことを言った。「気分が悪くなった人、降りてもいいですよ」。その言葉に従い、途中で降りてしまう人もいた。たしかに慣れないモニターを見ながら根を詰めてハンドルやペダルの操作をしていれば、なかには気分の悪くなる高齢者もいるだろう。

 だが、本当に驚いたのはその後である。運転シミュレーターが終わって、いよいよ実車でコースを走る段になり、教官が言う。「乗りたくない人いますか?」。ええーっ、これがいちばん大事なんじゃないの!? 辞退OKなの!? 女性が1人「はーい」と手を挙げる。結局、彼女はコースを走らなかった。それでも免許は更新できる。だったら、なんのための高齢者講習なのか……。

 最後は「3年後にまたお会いしましょう!」と教官が笑顔で僕らを送り出す。たしか前回行った教習所では「入学者を紹介してください」というパンフレットまで手渡されたのを思い出した。

 自動車教習所の生徒数は、ピークだった平成3年と比べて、4割も減っている。少子化と若者のクルマ離れが原因だろう。しかし、教習所の数も同じように減っているかといえば、1.5割しか減っていない。なぜ教習所は持ちこたえているのか? 駐車場のくだりで書いたように、土地を売却したり、ダウンサイジングすることで、なんとかやりくりしているのだと思う。

 ただ、それだけではない。若者の穴を年寄りが埋めているのだ。高齢者講習は平成21年、道交法の改正によって義務づけられた。現在、受講者は高齢者講習に5200円を支払う。ちなみに平成27年、高齢者講習の受講者数は全国で258万人を超えた。戦後のベビーブームで生まれた団塊の世代が今年から高齢者講習の対象になるから、受講者数はいっそう増えるだろう。

 この金額がまるまる教習所に入るのかどうかはわからないが、免許を更新したければ必ず受講しなければいけないという点が教習所にとっては強みと言える。なのに、その中身は前述したとおりのありさまなのだが……。

 そこには高齢者の交通事故をなんとかしなければ……という緊張感や切迫感が僕にはまったく感じられなかった。僕らはあくまでお客さんだ。だから気持ちよく帰ってもらい、「3年後にまたうちに来てくださいね」というのがありありなのだ。都内なら47カ所ある教習所のうち、どこを選ぶかは受講者のほうに選択権があるわけだから……。

 これでは高齢者の事故は減らないだろう。事故を起こす前に、運転をやめるか否か、僕も含めて高齢者は自分で判断するしかない。うちの女房は僕より10歳下だが、昨年、運転免許証を返納し、自分のクルマを廃車にした。そこに迷いはなかったみたいで、事実、僕は相談を受けることなく、いきなり「廃車にしたから」と言われたのだった。

 女房は今、近くなら電動アシスト自転車、遠くなら路線バスや電車を乗り継ぎ、行きたいところに出かけている。しかも「クルマを運転してた頃には気づかなかった風景がいろいろあるのよ!」なんて、なんだか楽しそうだ。状況が変わっても、変わった今を楽しむこと、それが「キレない」ためにも、いちばんの良薬なんだよなぁと、女房の話を聞きながら僕は思い至る。
2017年03月10日