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アテナ映像

週刊代々木忠

続・ブラックホール奥さん
  前回からの続きである。21世紀幕あけの年に撮った「あなたの欲望満たします」で、1人目の主婦・静香は吉村卓、平本一穂と続けてカラんだものの、彼女から「好き!」とか「うれしい!」といった心でつながろうとする言葉は、とうとう最後まで聞けなかった。

 そして2人目の夕紀も、夫婦ともに異性経験の少なさからか、セックスがワンパターンになり、満たされていないのだと言う。彼女は見た目も上品そうだが、目かくしされたまま男3人がかりの愛撫を希望した。

 男優は、片山邦生、佐川銀次、そして平本の3人。淫らな格好で男たちに舐めまわされ、羞恥と快感に悶える夕紀に、最初は銀次が挿入する。次に片山。最後が平本。ところがである、男たちが全員イッても、夕紀はまだイカない。それは前回の静香と同じなのだが、ひとつだけ違ったのは、ある発見が夕紀にはあったことだった。

 平本としているときのことをふり返って、彼女はこう言った。「今まであんまり気づかなかったんだけど、責めてるときに女の歓びみたいな……感じてくれてることに私も欲情して……」。「男の声を聞いてて愛液が出てくる?」と茶化し気味に訊いたら、「うん、気持ちいい」と答えた。

 別棟に待機している男優たちに伝えると、片山は「たしかにそう思いますね」と言う。平本も「あそこがいちばんエロかった」とうなずくのだった。

 夕紀は再び平本とまみえることになる。平本への愛撫から始まるのだが、恋人を見つめるような眼差しには愛情が感じ取れる。彼女は明らかに先ほどと変わっていた。「シックスナインしよ!」と顔に跨り、咥え焦らすと、平本もヨガり悶える。彼がヨガることで、夕紀は安心する。彼女が本能的になるためには、この安心こそが必要なのである。「気持ちいい?」「ここ?」と夕紀は言葉でもリードしながら、自らが欲情してゆく。

 2人が共鳴した後半、結合部を見せることが求められるアダルトビデオにおいては認められない体位を平本が取る。正常位のとき、夕紀の両脚を閉じさせたのだ。だが、股を閉じることでピストンしながらクリトリスへの刺激が生まれる。

 夕紀は「このままして!」「このままして!」と何度も訴えながら高まっていく。やがて彼女は感極まって「イクーッ! あ~イッてる、イッてる」と自分に言い聞かせるようにして絶頂に達する。男と抱き合ったままの体位で、生まれて初めてのオーガズムを迎えたのだ。目を見つめ合っているのにイケないというカップルには、ぜひオススメしたい体位である。

 クリトリスを刺激するのも、重要といえば重要なのだ。ミラーニューロンは体験を通して育っていくと言われているが、クリトリスの快感を借りてでも、見つめ合い交わった状態でイクことを脳が学習すれば、だんだん中でイケるようになるからである。

 「セックスして感動したのって初めてで、すごい今、満たされているって言うか、なんて言えばいいのか……すごいうれしい!」。終わったあと、夕紀はそう言って平本に抱きついた。

 2001年、女たちはレディコミの影響を大いに受けていた。16年経た今はどうだろう? 「セックスに愛情など求めないほうがいい」、「オーガズムに幻想を抱いてはいけない」、「自分を明け渡さない女がモテる」といった記事が目につく。セックスを重くとらえなければ、セックスで傷つくことも少なくなるのかもしれない。だが本当にそれでいいのか、そこに希望はあるのだろうかと僕は思ってしまう。

 愛情が伴わない、相手の体を使ったオナニーのようなセックスでは、いつしか快楽の奴隷となり、それは終わりのないブラックホールと化してゆく。快楽を目的にすれば、新たな刺激がないと、新たな相手を見つけないと、マンネリ化が起こるからだ。けれども感情が共鳴し合ったとき、人はセックスで体も心も満たされる。「もっと!もっと!」には決してならない。この作品はそんなことを教えてくれるのである。
2017年04月07日