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週刊代々木忠

ゴーン逮捕に思ったこと
  今年も様々なニュースがあったけれど、日産自動車カルロス・ゴーン前会長の逮捕は記憶に新しく、この事件は長期化しそうな様相を呈している。1999年、彼はルノーから日産に出向してきて、社長に納まった。当時の日産はもはや倒産してもおかしくない状態だった。それを見事に、それもルノーを超えるまでに立て直してみせた。

 輝かしい業績の裏では、彼を殺したいほど恨んでいる工場やそこに携わっている下請けの人たちがいたかもしれない。それはべつに日産に限った話じゃないとか、いやいや日本人だったらあそこまで残酷にできないだろうとか、いろいろな意見があったけれど、ともかく企業は生き残った。もし今回の騒動がなければ、日本の、いや世界の経済史に残る人物として尊敬されていただろう。

 だが、実際には逮捕である。役員報酬を過少記載した容疑だ。絶対的な権力は必ずや腐敗すると言う人がいる。そのとおりだと思う。このニュースを目にしたとき、僕はムヒカさんの言葉を思い出していた。以前にも紹介したウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領だ。

 清貧の生活ゆえ“世界で最も貧しい大統領”として知られる彼は、日本のテレビ番組のインタビューにおいて「私は貧しいのではない」と否定したうえでこう語った。「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、限りなく多くを必要とし、もっともっとと欲しがることだ」と。

 ムヒカさんが言ったのは「知足(ちそく:足るを知る)」ということだ。「知足」という言葉は、『老子道徳経』の第33章と第44章に出てくる。

 第33章は「知足者富」。足るを知る者は富む。富むといっても、金持ちになるということではない。「満足することを知っている者は心豊かに生きられる」という意味である。

 第44章は「知足不辱、知止不殆」。足るを知れば辱(はずかし)められず、止(とど)まるを知れば殆(あや)うからず。「満足することを知れば屈辱を受けることはなく、ほどほどを心得ていれば自らを危険にさらすこともない」。

 カルロス・ゴーンが日産に来て、すでに19年。V字回復を遂げてから、その手腕を買われて、当然、彼には次のお呼びが掛かっただろう。引き際はこれまでに何回もあったはずである。

 たとえば、京セラとKDDIを創業した稲盛和夫氏は、2010年、再建不可能と言われていた日本航空の会長に無報酬で就任した。翌期には航空業界で最も高収益の会社に生まれ変わらせ、3年足らずで再上場を果たしている。そして、その翌年には取締役を退任。まさに「知足」を体現するような生き方である。

 『老子道徳経』は中国の春秋時代、老子が書いたと伝えられている。春秋とは紀元前770年からおよそ320年続いた時代。それまで中国全土を治めていた周王朝が凋落し、大小合わせて200以上もの国ができたという。諸侯たちが残酷な殺し合い、つぶし合いを繰り返す乱世に『老子道徳経』は生まれたのだ。

 少なくとも今の日本は春秋のような戦乱の世ではない。しかし僕たち人間は、ともすれば「もっともっと」と何かを求める生き物である。「知足」は悠久の時を超えて、僕たちに大切なことを教えてくれている。



(*「週刊代々木忠」は年末年始のお休みをいただきます。次に読んでいただけるのは1月25日になります。どうかよい年をお迎えください)





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2018年12月21日