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週刊代々木忠

セックスと悟り
  このブログを始めてもう10年になるが、いつか書いてみたいと思いながら、ずっと書けなかったテーマがある。「タントラ」である。人生が変わるほどの気づきをセックスがもたらす――そんな場面を幾度も目の当たりにしてきたから、生き方の真理を探求する宗教が、なぜ人間の根幹である「性」を避けて通るのかと僕は納得できないままきた。

 禁欲を是とする宗教にあって「タントラ」は、セックスで悟ろうというものだ。現在「タントラ」「セックス」「動画」などの複数ワードで検索すると、いくつもの動画がヒットする(ウイルス感染のリスクや、巧みに購入手続きへ誘導するものも交じっているようなので、もしも見るならば慎重にされたほうがいい)。これら動画のすべてを見たわけではないけれど、見た限りで言えば「タントラ」とは名ばかりのものばかりだった。

 話を戻すと、これまで書けなかった理由は、ひとえに難しいからである。僕なんかじゃ、とても歯が立たない。だが、出家を決断し上座部仏教の僧侶として修行を積んでいる友人の影響もあって、ここ数年、禅や仏教の本を読み進めてきたり、その流れでチベット密教の本も読んだりした。そして、これまでの現場での体験を照らし合わせると、「タントラ」とはこういうことなのかと僕なりに思い至ったところもある。なので今回は書いてみようと思う。僕の理解に誤りがあれば、読者のみなさんにご指摘・訂正いただくとして……。

 「タントラ」という言葉自体は耳にした人も多いはずだが、「タントラ」を定義しようとするとけっこう厄介である。ヒンドゥー教のある種の聖典を指すこともあれば、仏教においては後期密教の聖典を指すこともある。じゃあ、ともかく聖典のことなのかと言われると、そうとも限らない。ある教義(信仰上の教え)を指す場合もある。この教義としての「タントラ」は「タントリズム」とも呼ばれる。また、インドの後期密教を指して「タントラ仏教」と呼ぶこともある。

 だんだん読むのが面倒になってきた人もいると思うので、僕なりの解釈を示そう。「タントラ」とは「人間の本性は宇宙の本体と同じであるから、人間の欲望や肉体を否定するのではなく、性の実践をも積極的に取り入れ、セックスによって神(宇宙)と一体となること」である。ただし「タントラ」におけるセックスは悟りを得るためであって、生殖や性欲の発散が目的ではない。

 次に歴史的な背景を見ていこう。インドの先住民の間には土着的な宗教が芽生えていた。ここにアーリア人が侵入してくる。紀元前1500年頃の話である。アーリア人のほうが文化も進んでおり、先住民を支配してしまう。とはいえ、両者の間には婚姻もあったようで、混血も起きていった。

 ところが、先住民は風土病を保菌しており、すでに免疫も獲得しているものの、新しく来たアーリア人に免疫はない。なので、多くのアーリア人が死んでいった。感染を防ぐために隔離政策がとられる。純血アーリア人、混血アーリア人(混血の度合いによって2階層)、先住民と分類され、分類が異なる者の同居や婚姻が禁止される。これがカースト制度の起こりである。その後、この政策は宗教に組み込まれてゆく。

 現在もインドで多数派を占めるヒンドゥー教だが、ヒンドゥー教の定義も広義・狭義でいろいろあってわかりづらい。たとえば、前述した先住民の土着的な宗教を指す場合もあるようだが、アーリア人が信仰していたバラモン教が変容を迫られ、もともとあった土着的な宗教を受け入れ同化してヒンドゥー教になったという見方もある。

 では、なぜアーリア人のバラモン教は変容を迫られたのか? そこには仏教の誕生がある。ブッダが目にした当時の世の中は、きっと苦しみに満ちていたのだと思う。もちろん今の日本にも差別は存在しているけれど、紀元前5世紀頃のカースト制度は人間扱いされない多くの人々を公然と生み出していたのだ。

 ブッダはカースト制度の下層に位置する人は言うに及ばず、カーストに属さない不可触民でさえも、苦しみから逃れる方法はあると説いた。それがいわゆる解脱(げだつ)である。その方法論が教えとして広まってゆく。そして仏教という宗教を形づくっていった。

 こうしてインドでは、仏教が大きな勢力を持つに至る。1世紀頃に成立したクシャーナ王朝は、仏教を手厚く保護した。ただ、この王朝の支配は北インドに限られ、全土には及んでいない。代わって4世紀頃に登場したグプタ王朝はインドのほぼ全土を支配したが、ヒンドゥー教を国教に定めてしまう。いつの時代も権力者と宗教は持ちつ持たれつの関係で、お互いに利用し合いながら歴史を作ってきたわけだが、無視された仏教には苦難の道が待っていた。

 ヒンドゥー教はもともと多神教であるけれど、生き延びようとした仏教は、ヒンドゥー教の中の神々やいろいろな教えを取り入れて、多神教になっていく。このようにして変貌を遂げた仏教はのちに「密教」と呼ばれることになるのだが、密教が取り入れた教えのひとつに今回の「タントラ」がある。


(つづく)
2019年07月19日