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アテナ映像

週刊代々木忠

14歳の彼および彼女たちとの出会い
  4カ月前、ある女性(20代)から「愛と性の相談室」に相談の申し込みがあった。彼女は解離性障害、いわゆる多重人格である。

 「他人からはつねに買いかぶられるか、あざ笑われるか、使い捨てられるかだったと思います。自分でも気づかないうちに過剰適応をくり返した結果、主軸のない自分が複数生まれることになったのかもしれません。しかし、どれだけ自我の数が増えたところで、主軸がないので脆く、自己完結に限界を感じ始めました」と彼女の文章は始まっている。

 会ったとして、はたして僕に何ができるだろうか。でも、長い文章を読み終えたとき、彼女には会わねばならないと思った。

 かつて多重人格の女性たちとは、かなり濃いつきあいをしてきた。それを作品に撮ったこともあったし、多重人格の3人をつれて千葉の山の家に何日間か籠ったこともある。

 彼女たちと接してわかったのは、人格が解離した当初、知らないうちに腕を切っていたり、大量の睡眠薬を飲み、病院で目が覚めたり……そのような事態に直面してもなお、なかなか現実を受け入れられない、認めたくないということである。だから、不安と恐怖、錯乱状態が続く。

 けれども、家族や近しい友人がそばにいて、客観的な視点から状況を説明してくれれば、他の人格への理解には大きな効果を生む。ここに来て一番の問題は、複数の人格に対して、体が1つしかないという現実である。なので、互いに譲り合って体を使わないといけない。

 もっとも、「愛と性の相談室」に応募してきた彼女は、このあたりはもうクリアしているようだった。彼女の今の主人格(メインで出ている人格)は14歳の男性だ。基本人格(もともとの彼女)は不在。他に4人いるが、こちらは全員女性で年齢は不明。そして人格としては出ないけれど、内部に「大いなるお母さん」のような温かい存在を感じるという。この存在は「マナ」と呼ばれている。「マナ」とは「南の島々の神の力」というような意味だ。それをわかったうえで名づけているのもなかなか凄いと僕は思った。これまで知り合った多重人格の人の中にも、「マナ」みたいに神様のような存在が1人はいたのだった。

 多重人格の人が自分の中でコミュニケーションを取る場合、つまり内部の人格同士が会話する場合には、ふだん僕たちが発するような「言葉」を必要としない。別の人格が考えていることや思っていることを感じ取れるわけである。これまで彼らと対話するなかで、この感じ取る能力は内部に限った話ではなく、僕と話しているときでさえ発揮されているように感じたものだ。

 ただし、今回相談に来た彼女というか彼が、これまでの人たちと違ったのは、人格解離の原因となった出来事がわからないことである。これまでは、親による虐待が引き金となったケースが圧倒的に多い。だから僕は「たとえば乳飲み子のころに残酷な育児放棄をされたんじゃないか」と訊いてはみたものの、それも特定はできなかった。

 さらに相談者は、解離性障害とは別に、持続性性喚起症候群(じぞくせいせいかんきしょうこうぐん)にも悩まされていた。僕も初めて耳にしたこの疾患は、突発的に性的快感が体を襲うという。性的なことを考えているわけでもなく、そういうシチュエーションでもないのに、いきなり体が感じ始めるのだ。

 他人事として読めば、それはそれで羨ましいと思う人もいるかもしれないが、実際にはそんな生易しいものではない。相談の最中にもこの症状が起き始め、「見せたほうが早いかな」と本人が言うので、ソファに横になってもらい、カメラは回したまま見せてもらった。欲情と切り離された体の快感に充足感はなく、肉体が強制的にイカされる感じだと言う。「体の感覚に飲まれたくない!」と訴える姿は、拷問にさえ見える。

 この疾患は原因が特定されておらず、明確な治療方法も確立されていない。ただ、持続性性喚起症候群ではないが、くり返し催眠を入れられてトランス状態になりやすい子にも、似たような現象がよく起きた。こちらは最初に自分がちょっとエッチなことを想像するというキッカケこそあるものの、それだけで体が勝手に反応し、自分の意思では止まらなくなってしまうのだ。

 この現象が起きたとき、僕は彼女たちに「呼吸を自分の意識下に置く」よう促し、サポートした。この話を目の前の相談者に伝えると「(だけど、それだと)呼吸に意識を占領されますね」と言う。「でも、呼吸は自分だもの。自分の心だもの。息だもの」と僕が言うと、指で“自らの心”と書いて「息だ!」と言った。以前、カウンセリングを受けているとき瞑想をすすめられて、呼吸もだいぶレッスンしたんだろうと思う。それがよみがえってきたのか、「あれでよかったんだ」と腑に落ちたようだった。

 あとになってふり返れば、僕はここで伝え損ねたことがあった。体の感覚に飲まれないためには、呼吸の際に「数をかぞえる」ということである。自分を取り戻すための呼吸は、これまでにも書いた長息や短息である必要はなく、ごくふつうの呼吸でいい。最初に全部息を吐いておき、丹田に気を下ろす意識をもって「1……2……3……4……」と頭の中で数えながら吸い、丹田に気をとどめて「5……6……7……8……」と吐く。こうして1から8まで数える呼吸を何度も何度もくり返すのである。

 吐く息、吸う息をしっかりと自分でコントロールし、数をかぞえることに意識を集中すれば、他のものを寄せつけないというのが、この呼吸の特性である。だから、持続性性喚起症候群のみならず、悲しみ、苦しみ、怒りといったネガティブな感情に翻弄されそうになったときにも、自分を取り戻すことができる。

 今回、僕は相談者と初めてハグをした。ハグといっても、かなり激しいものである。それは相談者が僕の体を使って、男と女がセックスしたときと同じような状況を作り出したのだと思う。先に書いたように、彼らは言葉を介さずとも思いや心でつながり合う術を知っている。それは言い換えれば、体を使わずに一体になれるということである。では、肉体ってどういうものなのかを自分の体を通してあらためて感じ取ってみたかったのではないだろうか。

 一方、現場で体を使っても理解できない子がけっこういるし、夫婦であれ恋人同士であれ、セックスしているのに、溶け合えない、わかり合えない人たちが増えている。自分の体を自由に使える者がつながり合えず、自分の数だけ体を持たない者がつながり合っている。しかしその子は、強制的に襲ってくる快感に苦しんでいる……。

 今回書いた相談の映像は「男にも女にもなりきれないまま、自己完結の世界で生きています」というタイトルで前後編に分けて「相談室」に掲載中である。この映像を見返すたびに僕は、今という時期にオレに何を伝えようとしたんだろう、オレはここから何を学べるんだろうと思わずにはいられない。
2019年09月06日