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アテナ映像

週刊代々木忠

コロナ離婚
  在宅勤務や外出自粛によって、夫婦が一緒にいる時間が増えた。するとストレスや価値観の不一致が表面化しやすくなり、相手の嫌なところがこれまで以上に目について、離婚相談が増えているという。

 幸い僕のところはそうなっていないが、過去にはいろいろあった。「それを言っちゃあ、お終いだよ」ということまでお互い言い合い、感情をぶつけ合ったりもしたのだから……。それでも結婚して52年が経つ。

 僕は、家の自分の部屋のデスクの上の写真立てに女房の写真を入れている。伊豆に行って小さな船で遊覧した。女房はデッキに立って、カメラを向けた僕のほうを見ている。眼鏡をかけて素っぴんの顔。あどけない表情。当時27歳だが、僕には10代に見える。生まれて4日目に最初の子を亡くした。その傷心旅行だった。

 たまにアルバムをめくって、その中の写真と入れ替えたりもするが、いま気に入っているのは、伊豆の写真以外では、上の娘が生まれて2歳になったとき、居間で女房と娘が楽しそうに話している横顔だ。

 そしてもう1枚が、娘が3歳になり、七五三で明治神宮にお参りに行ったときのもの。赤い衣裳を着て千歳飴を持った娘と手をつなぎ、娘のほうを見て女房は微笑んでいる。その大きくなったお腹には下の娘がいる。

 これらの写真を見れば、それぞれの時代が鮮明によみがえってくる。最初の写真は今でも心が痛むし、女房は僕以上につらかったはずだ。2枚目は何気ない母と子の日常、その笑顔にどれだけ救われたことか……。3歳になった娘の成長を祝うとともに、家族がもう1人増えようとしている。同じ時間を生き、悲しみも悦びも共有してきた証がそこには写っている。だから写真立てはいつも目にふれる場所に置いてある。

 喧嘩をしてお互いがぶつかり合ったときでさえ、「あんな時代もあったよなぁ」という思いが怒りを静めてくれることがある。

 それでも治まらないときには、僕は一人になって「試練を与えてくれた神に感謝します」と何回も口にする。「神」と言っても、どの神様でもないけれど、「感謝」という言葉には力があると実感させられる。否定的な心がやがて肯定的に変わっていくのである。すると女房のいい面のほうが思い出されてくる。これはふだんから眺めている写真もきっと作用しているのだろう。

 僕らの世代は「ともに白髪の生えるまで」というのが夫婦のあるべき姿のように言われてきた。「ならぬ堪忍、するが堪忍」は、もう我慢の限界ってことを我慢することが本当の忍耐であると。

 コロナによって、夫や妻のよさにあらためて気づいていく人もいれば、冒頭に書いたように離婚を考える人もいる。今はその両極が出ているように僕は感じる。

 離婚して幸せになった人はもちろんいるし、離婚がすべて悪いわけではない。けれども、危機をともに乗り越え、自分が選んだ相手と最後まで添い遂げた夫婦は、信頼と感謝の思いで人生の幕引きができるのではないかという気がしている。





2020年10月23日