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アテナ映像

週刊代々木忠

性の知識
 性をありのまま表現することは、かつて犯罪と見なされた。僕も「猥褻図画公然陳列罪」の容疑で起訴され、1972年から80年まで日活ロマンポルノ裁判の法廷に立たされた。40年以上前の話である。

 もともと日本の村社会は性についても大らかだった。それが権力側から目の敵のごとく扱われるようになったのは、第二次世界大戦の影響が大きかったんじゃないかと思う。覚えているのは、男と女が手をつなぐなんてとんでもない話で、お国のために若い人たちが命をかけて戦地に赴(おもむ)いているのに、そんなことするヤツは非国民だという風潮が支配していた。開戦の1941年から終戦の45年にかけて、それはどんどん色濃くなっていったのである。

 戦後も、性がタブーである時期は長い。同じ生理的欲求である食べることや眠ることは大っぴらに話せても、人前で性を語ることは憚(はばか)られてきた。そのうえ男女の格差もあった。女は男にもまして性を口になどできなかったのである。

 それが大きく変わってきたのは1990年代の中頃だ。レディコミが音頭をとって読者(女性)がAV男優とセックスできる誌上企画を立ち上げた。当時それに携わった者からは「応募数が多すぎて、選ぶのに一苦労だ」という話を聞いた。

 以前書いたことがあるが、『「快楽」をたくらむ女たち』(集英社)という本には、女性1057人の赤裸々な声が掲載されている。女性誌「COSMOPOLITAN」がセックスに関する読者アンケートを行い、それを収録したものだ。刊行は1998年。レディコミの体験企画より少しだけ後である。

 その3年後の2001年に、斎藤綾子・南智子・亀山早苗共著の本が出る。『男を抱くということ』(飛鳥新社)。ショッキングなこのタイトルは、女性の意識が変容してきた様相を如実に表している。

 ではその後、現在までの20年間はどう変わってきたのだろうか。医療関係者、たとえば産婦人科医がセックスについて具体的に語り出し、今は助産師の女性たちが活発に発信している。

 最近、気になっていた『CHOICE』(イースト・プレス)という本を読んだ。著者はシオリーヌ(大貫詩織)という女性。助産師であり、性教育YouTuberとして活躍している。『CHOICE』には〈自分で選びとるための「性」の知識〉というサブタイトルがついており、思春期を迎えた若者や年頃の子を持つ親御さんにはオススメの本である。

 内容は、生理、射精、ペニス、オナニー、妊娠、出産、セックス、避妊、中絶、性感染症、恋愛と多岐にわたり、その説明はじつに細やかで的を射ている。かつて拙著『プラトニック・アニマル』で南智子と対談した際、彼女は「男の性の話は自慢話か冗談だけれど、女の性の話は真剣だ」と言った。『CHOICE』も真摯に性と向き合った本である。それは著者が精神科の児童思春期病棟で働いているとき、正しい性の知識を持っていないがゆえの悲劇をたくさん見てきたからかもしれない。

 ただ、この本を読んで少しだけ気になるところもあった。たとえば「性的同意」について書かれた箇所だ。

 〈「キスしたいと思うんだけど、いい?」「セックスしたい気持ちがあるんだけど、あなたはどう?」といったように、まずは自分の気持ちを素直に伝えること。それこそが相手を尊重したコミュニケーションではないかと感じます〉

 彼女がこう書くのは、性的同意のない行為で傷ついた若者たちをたくさん知っているからだろう。でも人間は、性欲を理性的になかなかコントロールできない生き物であることも事実だ。恋愛やセックスは「感情」や「本能」に根ざしているものであり、「思考」でコントロールするには限界がある。

 キスをするにしても、お互いが盛り上がっていつの間にかキスになるし、このブログで何度か書いてきた「ミラーニューロン」によって双方が感じ取るものではないだろうか。「これからキスしていい?」「いいよ」では、ときめかないよなぁと僕は思うのだけれど。

 さらに言えば、事前に過ちを防ぐことはもちろん重要だが、知識を手に入れても人は過ちを犯す。そうなってしまったときには、どうすればいいのだろう。そこに必要なのは、なによりも情の通った温かみのある世間ではないだろうか。今の日本にはそれが足りていない。そのためには、僕たち大人が若い世代から本当に信頼される人間に成熟していかなければならないと思うのである。


2021年06月18日