年齢認証

あなたは18歳以上ですか?

ここから先は、アダルト商品を扱うアダルトサイトとなります。
18歳未満の方のアクセスは固くお断りします。

閉じる

アテナ映像

週刊代々木忠

アーカイブス111 祭りと友と商店街
 北海道にいる娘が孫2人をつれて泊まりに来ていた。ちょうど隣町の祭りがあり、「なつかしいから、子どもたちをつれて行きたい」と言う。そこで僕も一緒に4人で出かけた。

 家を出て、ほんの20、30メートル行ったところで、太鼓の音が聞こえてくる。つづいて、お囃子(はやし)の音も。僕は祭りが好きである。あの音を聞くとワクワクしてくる。音のする方向へ4人で歩いていくと、次の辻で一行に遭遇した。

 先頭は、背に「神」と書かれた白装束のおじさん。そのあとに子どもたちが太鼓車を引っぱっている。大きな和太鼓が1張乗っているだけなので、大人なら2人もいれば、子どもでも10人くらいで充分そうだが、すでに40、50人の子どもたちが長い引き綱をつかんで歩いている。上の孫もすぐにそれに加わる。

 ドーン、ドーンと打ち鳴らしながら進んでいく太鼓は「来るぞー!」とまわりに告げる露払いか。そのあとに、笛や太鼓といったお囃子を乗せた山車(だし)がつづき、最後は大人たちが担ぐ神輿(みこし)だ。

 で、一緒に出かけた娘はといえば、行く先々で幼なじみに出会い、話に花が咲いている。娘が通った小学校・中学校の、ここは学区内なのだ。久しぶりに会った同級生たちと「わー!」とか「久しぶり!」とか「私、子ども3人なのよ」「うちは2人!」とか、とにかく大盛り上がりで、一緒に行った僕のことはとりあえず忘れている。

 その光景を見ながら、僕はよそ者だが、娘はここが地元なんだよなぁと思った。娘は夫の転勤で2年東京を離れているけれど、ずっとここで暮らしていたとしても、ふだん同級生と会うことはそれほどなかっただろう。こういう機会でもなければ。

 太鼓車を引っぱっていた子どもたちは、駅前で福袋のようなご褒美をもらって解散になった。そのあとは、神輿がこの地区の氏神を祀る神社に向かって商店街をのぼってゆく。

 会社では大人しいサラリーマンも、家事や育児に追われる主婦も、お店をやっているダンナもオカミサンも、神輿を担ぐこのときばかりは血湧き肉踊り、真剣そのものの形相。お互いの肩書きは消え、オスとメスの本能がほとばしっているように僕には見えた。それを見ている6歳の孫も、目が輝いて高揚しているのがわかる。

 今は、全国のいたるところで“シャッター通り”と化した商店街を見かけるけれど、ここの商店街は珍しく活気に溢れている。祭りを見ても、地元への愛着と誇りのようなものを感じる。その団結は、きっと地域のコミュニケーションが健全で、昔からあった人間関係が商店街とともに生きているということなのだろう。

 そして、たとえふだんは忘れていようとも、この地域の中心にはまぎれもなく神社の存在があるということなのだ。かつては、日本のどの町や村でもそうであったように。


(2013年10月25日掲載)


 コロナ禍であちこちの祭りが中止になった。8年前に書いたこの祭りはおそらく今年も難しいんじゃないだろうか。そればかりか、コロナが収束したのちに再開されない祭りもあるはずだ。たとえば祇園祭とかねぶた祭といった大規模なものは、もちろん残っていくだろう。しかし、庶民的な小さな祭りはこのまま消えていくのではないかと思う。

 全国的に見れば人口の減少や高齢化もあるが、コロナ禍が商店街のシャッター通り化に拍車をかければ、祭りの担い手がいなくなってしまう。

 祭りに限らず、コロナ禍は僕たちの生き方を変えてゆく。働き方も休日の過ごし方も、そして価値観も……。それはまさに人類の文明がリセットの時期に来ているようにさえ思える。

 コロナ以前の2017年、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリは「気候のための学校ストライキ」を始め、環境問題の火つけ役になった。今では「脱炭素社会」実現に向けて日本の学生たちも動き出している。

 「エシカル」という言葉を近ごろ僕はよく耳にする。エシカル消費、エシカルファッション、エシカルヒーローなどという。「エシカル」は「倫理的な」という意味の形容詞だが、たとえば「エシカル消費」といえば、環境や人権に対して配慮されたものを買う、配慮されていないものは買わないという消費活動である。環境問題に限った言葉ではないものの、こと環境に関していえば「地球にいいことやってるのか?」という意味合いだ。

 アップル本社の広大なリング状の社屋、その屋根はすべて太陽光パネルである。すでに再生可能エネルギーで自社の電力を100パーセントまかない、2030年までにサプライチェーン、つまり取引する会社もクリーンエネルギーであることを条件としている。

 これらのムーブメントはコロナが引き起こしたわけではないけれど、現在の動きは、やはりコロナが後押しをしているように見える。政治家にはできなかったことを学生が、消費者が、企業が率先して行なっているのだ。コロナで失うものは確かに少なくない。けれども、光もまた射しているのである。

2021年07月02日